【開催レポート】at Will Work主催オンラインセミナー「調査から導くwithコロナ / after コロナフェーズの働き方改革~人的資本について~」
先日、7月10日に、第一回 at Will Work主催オンラインセミナーを行いました。
第一回のテーマは「調査から導くwithコロナ / after コロナフェーズの働き方改革~人的資本について~」
コロナ禍を経て、Face to Faceを控えた上で業務を構築していくことが求められつつありますが、その課題を解決する方法としてテクノロジーの活用が求められています。また、その推進のためにもデジタル領域で活躍する「デジタル人材」の育成が急務となっています。
・ニューノーマル(新常態)における人的資本のあり方はどうなるのか?
・中でも喫緊の課題と言われているDX(デジタルトランスフォーメーション)はどう推進されるのか?
今回は、「人的資本」や「人材戦略」について、特にデジタル人材の必要性や育成をケースに議論すべく、
経済産業省 産業人材政策室 堀田 陽平氏
デロイト トーマツ コンサルティング 田中 公康氏
の2名をお迎えし、お話を伺いました。
「持続的な企業価値の向上と人的資本について」
経済産業省 産業人材政策室 室長補佐 弁護士 堀田 陽平氏
堀田氏は、産業人材政策室において、人材活用における生産性向上をテーマとする「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会」を担当されています。今回は研究会で議論が行われている、「経営戦略に基づく人材戦略の必要性」についてお話しいただきました。
研究会では現在、
・自社を取り巻く外部環境や経営戦略に基づき、人材戦略を再構築することが必要ではないかということ
・人材戦略再構築・実行は、人事部に任せるのではなく、経営レベルのイニシアチブが必要ではないかということ
の2点を主に課題視し、議論されています。
堀田氏は人事部門と経営戦略の関係についてこう指摘しました。
堀田氏:日本の人事部が行った日本の企業の人事を対象とした調査(*人事白書2019)の結果、日本企業では、「半数以上の企業は人事部門が経営戦略の意思に関与できていない。」と感じていることが明らかになっています。これは、人事部門が管理をする部門と捉えられており、価値を創造する部門として捉えられていないことが一つの原因となっていると受け取れます。
また、人事部門のもつ人材マネジメントに関する課題感として、約33%の人事担当者が「人材戦略と経営戦略に紐づいていないと感じている」と答えました。これらの課題に対して、堀田氏は経営戦略に基づき人事戦略を再構築する必要性があるといいます。
堀田氏:時代の流れが大きく変化する時代、経営においても変革の必要性が生まれてきています。特に変化しているのは以下の三つ。
・人的資源は管理するものではなく、価値創造するものである
・イニシアチブは人事部任せであったが、経営戦略との紐づけが必要
・雇用コミュニティのあり方は囲い込み型から、選び選び合う関係へ
これらを踏まえたうえで、経営戦略に基づいた人事戦略を考えていかなければなりません。
また、研究会では、「経営戦略に基づいた人事戦略」について経営陣、投資家、取締役会がどういった役割やアクションを行えば良いかについても議論を行なっています。その中でも特に重要視している点について堀田氏はこう述べます。
堀田氏:経営戦略に基づく人材戦略を行う中で大切な視点として、研究会では、時間や場所にとらわれない働き方に対応することを重要視しています。コロナ渦を経て、出社ができないなどの環境の中で、事業を継続するという意味でも、今まで以上にそういった文化を根付かせる必要があります。
「デジタル人材は経験者とは限らない-『潜在デジタル人材』とは?『デジタル人材志向性調査』」について
デロイト トーマツ コンサルティング アソシエイトディレクター 田中 公康氏
田中氏は人事の領域の働き方や企業のデジタル化の支援をされています。コロナ禍を経て、企業からの働き方に関する相談が増えたとのこと。今回は、企業におけるデジタル人材の現状と、これからより必要となるであろうデジタル人材をどう確保していくか、についてお話しいただきました。
まず、デジタル人材の実態について。日本における20~50代の就業人口のうちのデジタル人材は12%(367万人)。現在もデジタル領域に従事している人はその中の58%(211万人)いう結果に。
しかし、デジタル人材の全体の約3割、約3人に1人が3年以内に離職してしまいます。
その原因について、田中氏はこう述べます。
田中氏:「業務の内容や価値に対して正しく評価されていないために報酬が低い」という点が挙げられます。また、「デジタル領域の価値を十分に理解できていない非デジタル人材」がデジタル人材を評価することが多く、納得感のある評価がなされていないという問題もあります。
また、非デジタル人材の中で、デジタル領域に関わりたくないという割合は57%。大企業ほど比率が高く、「デジタルについてよくわからない」「インセンティブについてメリットを感じないから手を出さない」など、デジタル領域への不慣れさがデジタル人材化への壁を作っています。
また、デジタル領域への入り口が少ないことも田中氏は原因として挙げています。
田中氏:社内でのデジタル領域に関わる機会や教育がほとんどないために、非デジタル人材の社員がデジタル領域に新たにチャレンジすること自体が難しいというのが現状です。
デジタル人材の必要性がさら高まる一方で、まだまだデジタル人材が評価されづらい現状があることをお話しいただきました。
トークセッション:with/afterコロナ時代における課題
お二人のお話の後は、理事の日比谷がファシリテーターとなり、トークディスカッションを行いました。
まずは、今回のテーマのキーワードでもある「デジタル人材」の定義について。
田中氏は、デジタル人材について特に決まった定義があるわけではなく、幅広い意味で用いられていると言います。
田中氏:データ分析を行うアナリティクス人材からデジタルテクノロジーを用いた効率化を行うイノベーション人材まで、会社によって様々な捉え方がされています。
また、デジタル人材の確保のための今後の人事モデル変革の必要性については、コロナによってデジタルの流れが加速してデジタル人材の必要性もさらに増したため、これまで正当に評価されなかったデジタル人材に対する人事評価のモデルも変わらないといけないと述べています。
堀田氏は、人事評価以外に加え、マネジメントも新しく見直す必要があると言います。
堀田氏:既存のマネジメント教育を受けて来た現在のマネジメント層が新しい仕組みを受け入れられるようになるには、マインドのリカレント教育が必要です。
また、「コロナ禍を経て「働き方改革」のイシューは変化するか?」という質問に対して、田中氏は、デジタル化に振り切った時に出てきた課題をどう対処するのか?が検討テーマになってくるだろうと答えました。
田中氏:多くの業種が、意外とデジタル化できるのではないかと気づいた中で、リモートワークでどう仕事を効率化するか、社員のモチベーションを維持するかなどが今後の主な課題になってきます。そもそも「会社に行くことが仕事ではない」という、仕事の概念自体の捉え直しが必要です。
最後に、現在まさに働き方の変化が起こっている最中ですが、コロナ禍を経て、デジタル化への企業の温度感はどうなのか?という質問についてお二人のご意見をいただきました。
企業のコンサルティングを行う田中氏は、直近のデジタル化で困っている印象はなく、with/afterコロナの時代にどうマネジメントをしていくかという長期的な相談をいただくことが多い言います。また、相談を受ける中で不安視していることがあるとのこと。
田中氏:コロナが収束したら「また出社すればいい」という流れにならないかということが不安。コロナが収束したら、前の働き方により戻しが起きないためにも、新しいマネジメントのあり方が必要だと感じでいます。
堀田氏は、デジタル化への流れについていけていない企業への不安を感じていると言います。
堀田氏:デジタル化に慣れていない企業は、デジタル化の動きを辞めたいなど消極的な声も上がっています。リモートワークにおいて、マネジメントを課題に感じている会社も多く、今まで以上に社内のコミュニケーションを増やして行く必要があると感じています。
まとめ
with/afterコロナ時代の経営戦略には、いかに人材戦略に経営視点を盛り込めるかが重要であるというお話が印象的でした。そして、その上で、今まで正当に評価されてこなかったデジタル人材のマネジメントが今後の企業の人材戦略の鍵を握っていると感じました。
次回は9月2日開催予定です。ローンディール社に「withコロナ / after コロナフェーズの働き方改革〜ニューノーマルにおける人材育成について〜」についてお話しいただきます。
こちらより詳細をご確認ください。
https://www.atwill.work/information/at_will_workwith_after_1/