最新のお知らせ イベント 2016.09.29

at Will Work Meet Up Event レポート

近年、日本の少子高齢社会が叫ばれ続け、さらに労働人口減少への打開策や女性の育児と仕事の両立など、よりフォーカスしたトピックが注目を集めるようになり、日本の社会全体としても働き方を改善しようという機運が高まっています。

その中で、「働き方を選択出来る社会づくり」を目指し、一般社団法人「at Will Work」が5月20日に設立されました。2017年2月の本格的なカンファレンスを前に、初お披露目として、2016年8月23日にMeet Up #0を開催致しました。 ご予約頂いたお客様に加え、当日お越し頂いた方など定員を超える60名弱にお集まり頂き、at Will Workの成り立ちや、ゲストとのトークセッション、ワークショップを行い2時間を通して、様々な企業や職種の方が互いに、これからの働き方について語り合うイベントとなりました。今回はこの at Will WorkのMeet Upの様子をイベントレポートとしてお届けします。

--代表理事 藤本あゆみより
働き方改革担当相が設置されたり、Google検索でも「働き方」や「働き方改革」の検索数が前年比250%に上昇したりと、昨今注目を集めているですが、今の日本社会では多様な働き方の実現が遠いというのが現実です。実際、ワークスタイルの改善に取り組んでいる企業は前年から10%増えたとは言え日本企業全体のまだ30%という数字も発表されています。その状況を変え、誰もが「働き方を選択できる社会」を実現すべく立ち上がったのが、一般社団法人at Will Workです。

at Will Workとは、at will work employee / employment (「自分がどういうふうに働きたい」と自分の意思を持って働く人、労働者も雇用者も意志を持って働き方を選択して働くこと)という英語に基づき、日本の社会にみんなで新しいうねりを起こすべく設立されました。

そのため、WILL(いし)の中でも「意思(○○したい、と思うだけ)」ではなく、「意志(○○したいので、そのためにどう行動するかを考える)」に重きをおいています。

代表理事・松林がご紹介致しました顧問・小口氏のお話では、at will workは日本の雇用構造や風土の中でも、「フレキシビリティ」と「ダイバーシティ」をより可能にし、スタートアップにおいても国や地域を超えた新しい働き方を実現することが出来る、というお話がありました。

その実例として、自身が顧問をしているスタートアップで、日本の高い技術によるものづくりと、ニューヨークで生まれる新技術やアイデアを結び、プロダクションとして昇華するFabFoundryなどの話も取り上げられていました。

(一社)at Will Workでは、今回のMeet Upを皮切りに、選択できる未来の働き方づくりのために、本年度は下記のイベントを予定しております。 □2016年8月23日 MeetUp#0
■2016年10月中旬 プレイベント「日本における働き方の課題」(予定)
■2017年2月15日 カンファレンス「未来の働き方シンポジウム」@虎ノ門ヒルズ

< Part2; Talk Session 〜WAAから学ぶ「at Will」な働き方〜 >

--ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス(株) 島田由香氏をお迎えして
第2部では、at Will Workな働き方の実例として先進的な制度「WAA」を取り入れている、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社で取締役人事本部長を勤められている、島田由香氏と(一社)atWillWork代表理事 藤本によるトークセッションを行いました。

WAA(Work from Anywhere and Anytime)とは

藤本「そもそもWAAとはどんな制度なのでしょうか?誰でも使えるというのは本当ですか?」

-島田氏:「WAAというのは、Work from Anywhere and Anytimeの略で、働く場所・時間を社員が自由に選べる制度です。そのネーミングにもこだわったのですが、「わー!」というのは、嬉しい時に出る感嘆詞ですよね。なので、WAAという人事制度を通してみんながハッピーになればという想いも込めて命名しました。」

WAA(Work from Anywhere and Anytime)の内容としては、3つの特徴があります。

①上司に申請すれば、理由を問わず、会社以外の場所(自宅、カフェ、図書館など)でも勤務できます。
②平日の6時~21時の間で自由に勤務時間や休憩時間を決められます*1。
③全社員が対象で*2、期間や日数の制限はありません。
*1 1日の標準労働時間は7時間35分、1ヶ月の標準勤務時間=標準労働時間×所定労働日数とする
*2 工場、お客様相談室などの部署を除く。
(ユニリーバWEB SITEより一部抜粋 https://www.unilever.co.jp/news/press-releases/2016/WAA.html)

-島田氏:「多様なライフスタイルを考慮して、朝の6時から21時の間に好きな勤務・休憩時間で働けるという人事制度で、今さらに5時から22時に変更するよう進行中です。21時(22時)以降もグローバル企業ですから会議が入る事もあるので、役員の許可を取れば勤務可能としています。

WAA 導入による組織の反応

WAA 導入による組織の反応

藤本「なるほど。なかなか先進的な人事制度かと思いますが、御社内で導入される場合に、組織からの変化を懸念するような、ネガティブな反応などはありませんでしたか?」
-島田氏:「7月1日に導入して、1ヶ月後アンケートを採ったら回答あった分は100%ポジティブな返答を得られました(未回答がネガティブということかもしれませんが・・・)。子育て中のママは勿論、例えば空いている昼に3時間運動でリフレッシュして仕事に集中出来る、といった声もありました。」

藤本「期間や日数の制限無し、ということに関してはいかがでしょう?よくある週2日だけ、といった制限など、段階的な導入やそれに伴う葛藤はありましたか?」

-島田氏:「フレックス制度は2009年から、在宅は月に8日までの制限付きで2011年から導入し上長・人事に要相談でしたが、それを在宅上限を撤廃し、今年7月にWAAを導入しました。それに伴い、上長許可あればムダな人事への報告も撤廃にしました。」 藤本「その際、反対勢力などは無かったのですか?」 -島田氏:「勢力まではいかないかな?会社がつぶれない、もしくは極端な話、人が死なない限り、良いものは良いと思ってますし、チームの協力もあったので気になるほどではなかったように思います。私は、社員の方がどれだけ心地良く働けるか整理するのが人事の仕事と思っていて、『心配(しんい)ではなく信頼(しんい)しましょう』とよく話しています。 "ぱ""ら"が違うだけで結果が全く変わってくるんです。 社内から出てきた意見としてよくあったのは、"目が届く範囲にいないと心配""なんとなく目に見える所で頑張っているように見えるから評価する"といった意見位でした。」

自分が何をしたいのかを(at Will)を大事にするように

藤本「評価という点では、WAA導入に伴って制度などは変えましたか?」
-島田氏:「実は変えてません。人事は"社員がどれだけ持っている力を発揮できる環境・文化を整えるか"が仕事だと思っていて、制限人事はいらない、自由を与えたいのです。」 藤本「そう自由になるにあたり、どうしたら良いのか・・・、といった方はいませんでしたか?」
-島田氏:「賛成する人もいれば、不満というより不安、という感じでした。見えないということで、サボってると思われるのではないか・・・、ということもあるみたいですそれは妄想だと思います。妄想と想像は別物なんですよね。しかし、日本では他人からどう見えるか、枠に入っているかを非常に気にして妄想する文化・教育があるな、と思っています。」

「WAA導入に当たって尽力したのはそこのマインドチェンジ、マインドセットです!『会社に来るな』といっている訳ではないことを説明し、ただ選択肢を増やしたことを伝え続けました。非強制の講習を10回程度設け、制度とマインドセットについて説明しやってみてダメなら即戻しますと伝えました。やってみない内からの妄想はムダだ!と。」
藤本「なるほど。」
-島田氏:「集まっている多くの社員の働き方の最大公約数・均一化を求めるのは現代では不可能だし、仕事をするために生きている訳ではなく、生きるうちの一角が仕事だ、とユニリーバで役員は伝えています。」

藤本「そんな最大公約数が求められないほど皆の生活が異なり、個々人が考えないといけない現代、各社員のワークライフバランスをとる、ということでマネジメント層が悩んでしまいそうですが・・・?」 -島田氏:「どうして良いか分からない人、すなわち何をして良いのか(What)分からない人とどうしたら良いのか(How)分からない人、もしくはWhatとHowどちらも分からない人、というのを見極めサポートするようにしていて、マネジメント層以上の研修に力を入れています。言われたことをやるように言われてきた人たちにとって、枠がない、枠を外した時に、自分が何をしたいのかを(at Will)を大事にするようにしているのです。」

島田さんと藤本のトークセッションの後は、ご参加頂いた皆様から質疑応答のセッションを設け、ご参加頂いた皆様の職場の中でも実現可能なヒントを持って帰って頂けるような時間をとりました。

質疑応答セッション 質疑応答セッション

Q&A(質疑応答セッションより)

参加女性:「どれくらいの人がWAAを使っていますか?やはりママのような女性が多いのでしょうか?どういった層が多いのですか?」


-島田氏:「WAAの制度を使える人の中で、約7割が1回は体験済みとなっています。頻度はバラバラ。男女はデータなどの属性は取っていません。管理職/非管理職と部門のみ集計しました。ママが多い予想でしたが、結構男性のコメントもあり半々位のようです。お父さんが子供と向き合えるようになった、奥さんのサポートが出来るようになって感謝されたというものか、リフレッシュ出来る、というのが男性からの声で多いですね。」

参加男性1:「評価制度をほとんど変えずWAAを導入したということですが、元々ユニリーバの評価制度がWAAと親和性が高いものだったのですか?どういう評価なのでしょうか?それは外資だからだと思いますか?」


-島田氏:「外資だからと言うのは好きではないのですが、元々親和性が高い評価制度ではあったと思います。元々、目標に対してどれだけの結果を出したのか(What)とどのようにして結果に繋げたのか(How)での評価はユニリーバでグローバルな基準でした。」「役員会で、残業月45時間上限にする、というのは今回は見送りになりました。反対意見、特に45時間以上分は残業代を出さないのか!というような声が出たからです。その代わり、労働時間が短くなった人を評価する、という評価制度を導入するかどうかについては議論しました。なぜなら生産性が上がったという事だからです。ですが今回は、あまりに大きな変化を一気に進めると振り返りがし辛くなるなどの理由もあり、一旦は見送りになりました。」「働き方はマインドの話です。とりあえず、コアタイム・休憩時間の制限は撤廃、休憩時間も任せるが、月の所定時間は守るように、ということで始めました。結果として労働時間は短くなったし、残業代も減ったが、別に経費削減は目標にしていません。どうすれば早く帰り生活を充実させられるかを考えてほしいのです。将来的には減った残業代を、評価としてボーナスで還元したいと思っています。その一環として、実験的にシェアオフィス導入などで通勤時間も減らす努力もしています。」

参加男性2:「工場の方・派遣の方はWAA今回未導入ということですが今後は?」


-島田氏:「派遣は派遣会社の社員だから、ユニリーバ社では触れられないのです。工場の社員に関しては、ラインに入っての作業である以上WAAが成り立たない。検討したが業務の性質上出来ないとスタッフが理解してくれています。」「その代わり、より効率よく働けるシステムやオートメーションなどが出ればすぐ出資・導入したいと考えています。工場では求めているもの、例えば休みをきちんと取りたい等、が違うのでそこにフォーカスしようとしています。」「最初はお客様相談室も導入しない方向でしたが、上長・現場と相談し一部業務を外注にしてWAAを8月から導入しました。それくらい誰の意見でも向き合っ取り組む姿勢はありますよ」

☆10月11日18時〜、第3回WAA説明会を開催します。ユニリーバから日本の社会・制度を本気で変えたいと思っていて、最近チームWAAを結成しました。役員層が反発する会社へも出向いていて説得もしますので、みんなでat Willな働き方を目指しましょう!

< Part3; Workshop >

第三部は「みんなが働きやすい社会を考えるダイバーシティ・アイデアソン」と題して、(一社)at Will Work理事の猪熊がファシリテーションを務め、ワークショップを開催しました。

アイデアソンでは、まず身近に想定できる「今、働きづらい人」を想定し、その人の課題を付箋に羅列していきました。その後、想定した「働きづらい人」とその課題を解決するためのアイデアを一人ずつアイデアシートに記入して頂きました。
この時、「自分の会社では無理だろう」とか「実現不可能なアイデアだから...」などといった制限は一旦考えずに、自由な発想でアイデアを書き出してもらいます。
最後にグループごとにシェアタイムを設け、それぞれのアイデアをシェアしてもらうことで、様々な価値観やアイデアが共有され、みなさん活発にディスカッションを楽しんでいらっしゃいました。

様々な課題を持った人々を基点に、アイディアが出され時間が足りないほどどのお客様も積極的にワークショップに取り組んで下さる姿が印象的でした。盛んにコネクションを結び、話し合われている様子から皆さまのワークスタイル変革への熱意が伝わってくるようでした。終了時のアンケートでも、大変満足・満足と答えて下さったお客様がほとんどで、唯一満足でないとお答えになった方も、改善点をご呈示下さるポジティブな結果となりました。また今後の(一社)at Will Workの活動をご期待頂ければ、幸いです。